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業界で注目を集めるAIプログラマー、ゲームの理想をかなえる技術に妥協なし

GAME


長谷 洋平
株式会社バンダイナムコスタジオ 技術統括本部 技術第1開発本部 プログラム1部 プログラム2課 プログラマー
ゲーム制作学科/2009年卒業

ゲーム業界で革新を続けるAI技術。第一人者としてCEDECで講演

現在、急速に注目を集めているのがAI(人工知能)の技術だ。自動運転車や医療など様々な分野でAIによる技術革新が期待されているが、ゲーム業界も例外ではない。ゲームハードの世代交代の時期ということもあり、AIはVR(仮想現実)とともに業界でもっともホットな技術なのだ。

株式会社バンダイナムコスタジオにプログラマーとして勤務する長谷洋平さんは、ゲーム開発の中でもAIを専門に扱うスペシャリスト。日本最大のゲーム開発者向けカンファレンス「CEDEC」でも2年連続で講演するなど、業界を代表するAIプログラマーとして知られている。

もっとも、長谷さんが入社した2009年は、まだ現在のようにAIが脚光を浴びていたわけではなかった。長谷さん自身もAIについての知識は全くなかったという。

入社後、『エースコンバット*』の開発に加わった長谷さんは、そこで初めてAIプログラミングを担当。AIの魅力に気づいたのはそのときだった。
「AIの技術を勉強して実装していく中で、自分が手を入れれば入れるほどAIで動くキャラクターがどんどん賢くなっていくことを知ったんです。まるでキャラクターに命を吹き込んでいるような感覚になって、そこから興味が膨らんでいきました」。

ゲームにおけるAIの役割は、主にキャラクターを自動で動かすための制御である。欧米では「FPS(ファーストパーソン・シューティングゲーム)」と呼ばれる一人称視点の戦争ゲームが人気ジャンルだが、せっかくリアルなグラフィックで没入感を得ても、AIキャラクターが不自然な動きをすると一気に興ざめしてしまう。そういった事情もあり、欧米では早くからAIの重要性が叫ばれていたのだ。

日本を含め、世界的にゲーム業界でAIブームが起こったのはソニーのPS3からPS4へのハードの変わり目。新世代機の登場で処理速度が上がり、より高性能なゲームが増える中でAI技術が着目されるようになった。そんなAIの進化期に長谷さんは様々な影響を受けたのだ。

開発実機が入学の決め手に。チーム制作で賞も獲得

高校時代の長谷さんはゲームが好きで数学が得意な学生だった。将来の仕事について親と話し合う中で、「ゲームプログラマー」が選択肢に出てきたのは自然なことだったといえる。

進学先としてHALを選んだのは、TVCMなどで名前を知っていたからということもあるが、何より体験入学に参加した時の経験が決め手になった。
「体験入学で初めて開発実機に触れた時に、ここなら自分の目指す世界に行けそうだなと思ったんです」。

長谷さんにとって貴重な経験となったのが、クラスメートとチームを組んでゲーム制作をしたこと。プランナー、デザイナー、プログラマーの3職種6名が集まり、3ヵ月間をかけて1つのタイトルをつくり上げた。しかし、順風満帆とはいかなかった。最初に考えていた企画がどうしても面白く仕上がらず、話し合った結果、1から企画をつくり直したという。その段階で締切まで残り1ヵ月。長谷さんとチームメンバーは、そこから土日もなく徹夜続きで必死に作品をつくり、完成にこぎつけた。結果は上々。出品した学内のコンテストでも銀賞を受賞し、実際にプレイした人からのアンケートにも絶賛の声が並んだ。

「このメンバーで面白いゲームをつくりたいという、その思いだけで最後まで頑張れました。仲間と長時間かけて開発したことでチームにも愛着が湧いたし、あのときの経験は今でも活きていると感じます」と当時を懐かしむ。

技術で妥協しないこと。HALで学んだこだわりの精神

HALでプログラマーとしての経験を積んだ長谷さんは、就職活動においてバンダイナムコスタジオを選択。最初は「新卒募集の案内が出ていたから」くらいの気持ちで受けたというが、会社を知るうちに「ここしかない」と思うようになっていった。
「バンダイナムコスタジオは幅広いタイプのゲームをつくっているので、色々な経験ができると思いました。また、アットホームな雰囲気も良かったですね」
現在、新作タイトルにAIプログラマーとして関わっている長谷さん。ゲーム制作におけるこだわりは、ずばり「技術で妥協しないこと」だという。

「ゲームは技術で成り立っている遊びなので、技術を制限してしまうと、その中でしか面白さをつくれなくなってしまうんです。プランナーが出してくるアイディアはいわば理想で、すべてを実現できないこともあるのですが、可能な限り技術面で貢献したいと考えています。プログラマーとして技術では絶対に妥協しません」
面白いものをつくるために妥協しないこと、チームメンバーのアイディアを可能な限り形にすること。HAL時代に経験したチーム制作の苦労と面白さ、そして面白いゲームをつくり上げたときの喜びが、今でも長谷さんの原動力になっている。

長谷 洋平
長谷 洋平
ゲーム制作学科/2009年卒業
高校卒業後、HAL大阪ゲーム制作学科に入学。インターンシップを経て2009年に卒業後、バンダイナムコスタジオに入社。『エースコンバット*』シリーズや『鉄拳*』シリーズに携わり、現在はAIプログラマーとして新作タイトルに関わる。
株式会社バンダイナムコスタジオ
株式会社バンダイナムコエンターテインメントの子会社として、ゲームソフトの企画・開発を行う。代表作に『鉄拳*』シリーズや『テイルズオブ*』シリーズ。近年はPSVRソフト『サマーレッスン*』で話題に。

*インタビュー中の全てのゲームタイトルはバンダイナムコエンターテインメントの提供。

※卒業生会報誌「HALLO」70号(2016年11月発刊)掲載記事