News |

常に最新技術を取り入れながら〝ゲームを面白くする音〞を追求

MUSIC


森口 崇
株式会社カプコン プロダクション部 サウンド開発室 サウンドエンジニア
ミュージック学科/2005年卒業
武井 良太
株式会社カプコン プロダクション部 サウンド開発室 サウンドエンジニア
ミュージック学科/2010年卒業

制作者たちからバトンを繋ぐアンカーとしての使命感を

数々のヒット作を世に放ってきた株式会社カプコンで、ゲームサウンドのマスタリングやミキシングを一手に担っているのが、サウンド開発室に所属するサウンドエンジニア。ここで活躍しているのがHAL2005年卒業生の森口崇さんと、2010年卒業生の武井良太さんだ。ともにミュージック学科出身の先輩・後輩でもある。

2人の職場は、カプコン大阪本社内にあるbit MASTER studio。最新鋭の音響設備を整えたスタジオだ。
「僕たちの職種は一般的にミキシングエンジニアと呼ばれています。ミキシングやレコーディングを担当するエンジニアを社内に抱えているゲーム会社は、世界でも珍しいと思いますよ。今の職場の大きな魅力は、最新技術や新しい試みに早い時期から着手できることですね。例えば、ひと昔前であればサラウンドがあります。ゲームではPS2の頃から徐々にゲームにも対応できるようになっていきましたが、カプコンはその以前からサラウンドに取り組める環境がすでに整っていました。今ならVRの3Dオーディオがそうですね。常に最先端の音響に触れて、いち早く取り組めることは刺激になりますし、やはり嬉しいです」と森口さん。

日々、このbit MASTER studioで、ゲーム内の声や効果音、BGMといった音の最終調整が行われ、カプコンのゲームサウンドは仕上がっていく。
「カプコンでつくられたすべての音がここを通っていくんだという意識が常にあります。ここを通ったからには、絶対にいいものでなくてはならない」と、森口さんは力を込める。

ゲーム業界で働くためのベースは学生時代に構築

森口さんと武井さんが仕事で関わっているのは、主に同じサウンド開発室のメンバー。ゲーム音楽を作曲するコンポーザー、効果音をつくるデザイナー、彼らを取り仕切るサウンドディレクター、さらに専門のプログラマー、契約関係を管理するマネージャーといった面々だ。
「フロアが別なので、何かあればすぐに走って会いに行くなど、距離を感じさせない密なコミュニケーションを心がけています」と武井さん。そんな武井さんのことを、先輩である森口さんは「とても誠意がある。立場の異なる人たちと関わる上で、彼の対応に不安を感じたことは一度もありません」と高く評価する。武井さん本人は、「HALって、先生や先輩との関わり方が職場関係と似ているところがあるんです。授業の内容だけではなく、社会人としての立ち居振る舞いが自然と身についたように思います」と答える。

学生時代を振り返り、森口さんはこう話す。「会社は即戦力を求めていたので、基本理論や技術を在学中に身につけられたことが、大きなアドバンテージになりました。また、納期を絶対に守るという考えは、HALが課題提出にとても厳しい学校だったから。簡単にはこなせない課題が出されるのに対し、毎回必死で向き合っていた経験が間違いなくベースになっています」。

一方の武井さんは、HAL入学時はクリエイター志望だった。「効果音づくりやスタジオ収録などの授業を通して、クリエイターとは違う面白さを感じるようになっていきました。3年目には完全にエンジニア志望に変わり、在学中に自分にふさわしい道を見つけられたことは大きかったです。音楽だけじゃなく、大好きなゲームにも同時に関われる職種は他にないですから」。

「ゲームをつくっている」その意識は常に忘れずに

映画や音楽の世界で良しとされているものが、ゲームの世界でも良いとは限らない。そんな時に重要になるのは「自分がゲーム会社の一員であることを絶対に忘れないことです」と森口さん。
「いくら音の演出が優れていても、ゲームに合っていなければ意味がない。音はあくまでゲームのためのものです。音楽的にはアリでもゲーム的にはナシなら、意思を持って修正するのが僕たちの役割。それに、すべてが自分の思い通りになることもあり得ません。自分ではコントロールできない制約もある。そして、納期は絶対です。どこかで現実を受け入れ、追求しきれなかったことは、未来の課題として次の仕事につなげていくことも大切だと思っています」。そんな森口さんの言葉に、武井さんも大きく頷き、こう語る。

「ただ、それらの制限と戦いながら、ゲームサウンドで不可能だったこともいつか実現させたい。そのために、僕は開発メンバーとのコミュニケーションだけでなく、自分自身がサウンドエンジニアとしてさらに知識や方法の引き出しを増やし、新しいことに挑戦していこうと心がけています。将来的には映画のようにダイナミックな演出を、ゲームの中でも取り入れていきたいです。ここには常に新しいことにチャレンジできる環境が備わっていますから、新しいモノが大好きで、ゲーム好きでもある僕にとってはまさに理想の場所。ここでゲームサウンドエンジニアとしての進化を目指したいです」。

森口 崇、武井 良太
武井 良太(左)
ミュージック学科/2010年卒業
2010年にHAL大阪ミュージック 学科を卒業後、株式会社カプコンに入社。当初はサウンドデザイナーとしてゲームの効果音づくりに携わる。これまで関わってきたゲームは『バイオハザード6』、『モンスターハンター3(トライ)G HD Ver.』、『モンスターハンター ストーリーズ』など。
森口 崇(右)
ミュージック学科/2005年卒業
2005年にHAL大阪ミュージック学科を卒業後、株式会社カプコン入社。アーケードゲームからキャリアをスタートし、現在はコンシューマーゲーム全般に携わる。これまで関わってきた主なゲームは『戦国BASARA』シリーズ、『モンスターハンター』シリーズ、『逆転裁判』、『バイオハザード7 レジデント イービル』など。
株式会社カプコン
2013年6月で創業30周年を迎えた日本屈指のゲームソフトメーカー。『ストリートファイターII』、『バイオハザード』、『モンスターハンター』など、キャラクターやストーリー、世界観、音楽に至るまで、その高いクオリティは世界中で評価されている。

※卒業生会報誌「HALLO」70号(2016年11月発刊)掲載記事