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“未来をつくる車”と“人を運ぶ車”、それぞれの視点でマツダの“今”と“未来”をデザインしていく

CAR DESIGN


唐澤 勇樹(上写真・右)
マツダ株式会社 デザイン本部 アドバンスデザインスタジオ
カーデザイン学科/2015年卒業
前西 恭介(上写真・左)
マツダ株式会社 デザイン本部 プロダクションデザインスタジオ インテリアデザイングループ デザイナー
カーデザイン学科/2016年卒業

アドバンスと量産デザインそれぞれの場で活躍する先輩と後輩

日本を代表する自動車メーカー・マツダで、カーデザイナーとして働く唐澤勇樹さんと前西恭介さん。1年違いでHALのカーデザイン学科を卒業した先輩後輩の間柄だ。同じデザイン本部に在籍するが、唐澤さんはその中でも、未来のマツダカーを創造する「アドバンスデザインスタジオ」に所属。次世代に向けたコンセプトを立案し、モーターショーなどに出展するコンセプトカーのインテリア(内装)のデザインを担当している。対して、前西さんが所属するのは「プロダクションデザインスタジオ」。量産デザインと呼ばれる部門で、市場に出る販売用自動車の同じくインテリアデザインを手がけている。「同じ会社で、同じインテリアデザインに携わっているけど、マインドは全然違うよね」という唐澤さん。

アドバンスデザインは、今後のマツダの方向性を決める舵切りのような役割で、慎重に検討を重ねながら、長い時間をかけて次のテーマをつくり上げていく。未来へ向けてマツダを牽引する重要なポジションだ。「とくに注力しているのが世界感。その空間に入った時にどう感じるか。例えるなら匂いのようなもので、パーツ点数が多い中で、すべてに同じ匂いをつけていくのはすごく大変ですが、その匂いで新たなイメージを牽引していくのが僕たちの仕事です」。そのアドバンスチームから提示されたテーマを、プロダクションに置き換えて成立させるのが前西さんら、量産デザイン部門の仕事だ。こちらはもっとシビアな世界。「特に、僕たちはインテリア担当なので、乗る人を直接に包む部分をデザインしていきます。人の命にも大きく関わることを念頭に置きながら、ひとつ1つのアイディアを考案していく。責任重大です」。

「車が好き」という思いからカーデザイナーの道へ

2人がカーデザイナーを目指すきっかけをつくったのは、ともに大の車好きである父親。影響を受け、いつしか自分も車に夢中になった。前西さんは家族で行ったイタリア旅行の旅程に、フェラーリ博物館が組み込まれたほどだ。しかし、そこで出合った記念車「エンツォ・フェラーリ」が、前西さんの運命を大きく変える。「『やっぱりイタリア人には敵わない』と圧倒されましたが、もっと衝撃的だったのが、それが実は日本人デザイナーの手によるものだったということ」。そうして、帰国後に自身もカーデザイナーを志す。しかし、大学に行っておきたいという考えから、大阪芸術大学へ入学。多ジャンルの製品デザインを学ぶデザイン学科を専攻したが、「もっとカーデザインについて専門的に学びたい!」と両親に頼み込んでHALへ編入した。唐澤さんは、とにかく車に関わる仕事をしたいと思い、まずは車がどのようにつくられるのかを詳しく調べるところから始めたという。そうして惹かれたのがカーデザイナーの職業。当時住んでいた長野からも遠くない、HAL名古屋校でカーデザインを学ぶことを決意する。

HALで初めて出会う同志たちと切磋琢磨した日々

HALでは、仲間の存在がとても大きかったという。高校時代は、同じ夢を持つ友人は皆無だったが、HALでは同志ばかりが集まっている。仲間と切磋琢磨しながら、腕試しにコンテストにも積極的に参加。2人ともカーデザイナーの登竜門と言われる「カーモデルエキシビション」の学生デザインチャレンジに選出された。唐澤さんは、「マツダデザインカレッジ・コンテスト」の優秀賞や、電気自動車のデザインを競うコンテスト「カーデザインアワーズ・アスパーク」で最優秀賞も受賞。「高校の頃は勉強が大嫌いで、全く興味が持てなかったのに、HALに入学して世界が変わった」という。好きなことだから積極的に学び、それに伴って周りからの評価が変わっていった。前西さんは卒業制作展で大賞を受賞。カーデザイン学科が大賞に輝くのは、HALで史上初の快挙だ。「4人のチームで半年以上かけて、モデルの制作や展示ブースの制作まで手がけました。今考えると、小さなデザイン会社と同じくらい機能していて、この時の経験がそのまま今に役立っています」。

人々の生活を変え、車も変わるそれが“斬新”なカーデザイン

今回のテーマでもある「斬新」とは何か。それぞれの立場から興味深い答えが返ってきた。「人の価値観を変えるものですね」というのは唐澤さん。「目新しいものは世の中にたくさんあるけど、人の価値観や生活を変えられるほどの発明は僅か。たとえば、スマートフォンやSNS、ヒット家電などは、世に出たとたん人々の生活をガラッと変えましたよね。はじめは非日常でも、皆に共有され受け入れられるものが斬新。だから斬新にまで行きつくデザインはすごいんです」。前西さんは「選択肢が増えることです」という。「今までと違う切り口のモノを表現・提案し、人々に受け入れられれば新たな選択肢や価値観となって生活を豊かにします。こういった取り組みや提案こそが斬新だと考えます」。

今、マツダという日本のトップメーカーの最前線に立ち、唐澤さんと前西さんは、それぞれの「斬新」を目指し走り続けている。

唐澤 勇樹(上写真・右)
カーデザイン学科/2015年卒業
高校卒業後、HALへ入学。在学中は様々なコンテストへ積極的に参加した。その中の「マツダ デザインカレッジ・コンテスト」での優秀賞受賞をきっかけに、マツダでのインターンシップを経て同社に入社。現在はアドバンスデザインを担当している。
前西 恭介(上写真・左)
カーデザイン学科/2016年卒業
大阪芸術大学を2年で退学し、カーデザインを専門的に学ぶためにHALへ入学。目標であったマツダへの就職を決める。卒業制作展では自身のデザインがグループ内で採用され、史上初のカーデザイン学科での大賞に輝いた。現在はマツダ株式会社で量産デザインを担当。
マツダ株式会社
1920年設立。広島県を本拠地とする自動車メーカー。ロータリーエンジンやスカイアクティブ・テクノロジーなど様々な技術を開発し、自動車業界を牽引してきた。1989年にリリースしたロードスターは、オープンカーでの生産累計世界一を記録している。

※卒業生会報誌「HALLO」71号(2017年11月発刊)掲載記事