マルチな才能を発揮する人気作のサウンドディレクター
- 塙 大輝
- KLab株式会社 クリエイティブ部 サウンドディレクター
- ミュージック学科/2015年卒業
企業でのサウンド制作にこだわり気鋭のメーカーに入社
電車などで音を消してゲームをプレイすると、何だか物足りなさを感じないだろうか。普段はあまり意識しないかもしれないが、BGMや効果音はゲームを盛り上げてプレイヤーを没入させる重要な要素なのだ。
『キャプテン翼 ~たたかえドリームチーム~』や『幽☆遊☆白書 100%本気(マジ)バトル』『BLEACH Brave Souls』といった大ヒットタイトルを開発するKLab株式会社で働く塙大輝さんはサウンドチームに所属し、ゲームサウンドの制作にその才能を発揮している。
高校時代はテニス部の部長と生徒会副会長を兼任。さらにギターも弾きこなし、バンドも結成し、文武両道を果たしていた塙さん。ゲームも大好きで、特に心揺さぶられるBGMやいつまでも頭に残る効果音といった「音」に強く惹かれた。将来は大好きな音楽とゲームに関われる仕事をしたいと考えたという。
「HALは設備がしっかりしているし、先生方も現場経験が豊富で実績のある著名な方ばかり。技術だけでなく就職をサポートしてくれる体制が整っていることも大きかったです」。
音楽の道を志す場合、創作に自由に没頭できるフリーランスを選ぶことも少なくない。だが、塙さんは企業の一員として仲間と共にゲームを制作することにこだわった。リーダーとして人をまとめることに長けており、マルチタスクを得意とする自身の気質をよく理解した上での判断だった。
サウンドディレクターとして社内外の人と関わる
新卒で株式会社カプコンに入社。その後、KLab株式会社へ転職し『キャプテン翼 〜たたかえドリームチーム〜』のサウンドディレクターとして忙しい日々を過ごしている。楽曲制作はもちろん、効果音の制作、デバッグ、実装、さらに外注先とのやりとりやメンバーのタスク管理など仕事の内容は多岐にわたる。
ビッグタイトルゆえに関わる人数も多い。サウンドチームのメンバーだけでなく、プログラマーやデザイナーといった別チームとも連携する必要がある。
「制作の進行は多くの場合、企画ができてイラストが完成し、UI(ユーザインターフェース)と演出ができてからエフェクト(効果)とサウンドをつけるという流れで進行します。つまり、サウンドは制作工程の最後になることが多い仕事なんです」。
制作の進行具合を把握していなければ、いざサウンドの制作段階を迎えた際に、期間が足りず納期に追われることになる。さらにサウンドをつけていくうえで、他にミスが発覚すれば、該当の部署にフィードバックしなければならない。担当だからといって、自分の作業だけを考えていればいいわけではないのだ。
外部のクリエイターや企業とも連携する必要がある。声優のブッキングや録音スタジオでの収録、スタジオミュージシャンやミキシングエンジニアなどは基本的に外注だ。塙さんは社内だけでなく、そうした社外スタッフとの調整も一手に引き受けている。
©高橋陽一/集英社 ©高橋陽一/集英社・テレビ東京・エノキフィルム 原作「キャプテン翼」高橋陽一(集英社文庫コミック版) ©KLabGames 『キャプテン翼 〜たたかえドリームチーム〜』
2017年6月13日リリースのスマートフォン向け対戦型サッカーシミュレーションゲーム。好きな選手を集めて自分だけのドリームチームを結成し、全国のプレイヤーと対戦できる。
俯瞰した視点でプロジェクト全体を見る
ディレクターとして社内外の管理業務を行う一方で、クリエイターとして積極的にサウンド制作もこなす塙さん。多くの人と関わりながらマルチタスクをこなすために心がけているのは、助け合いの精神だという。
「前のセクションで進行が滞った分は、自分の制作期間を短縮することで調整したり、チーム内外で他の人のタスクがたまりすぎていたら巻き取ったりしています。そうすると、今度は自分が困っているときに周囲の人が助けてくれるんです」。
目の前の仕事だけでなく、 俯瞰 した視点でプロジェクト全体を見渡すのが塙さんの仕事術だ。「僕らはサウンドだけをつくっているのではなく、ゲームをつくっているんです」と迷いがない。
クリエイターならではの気配りも身についた
大人数が関わるからこその苦労もある。スケジュールが厳しい時期は、連絡漏れやコミュニケーション不足による認識の 齟齬 が発生しがちだ。塙さんはタスク管理ツールなどを取り入れることで、そうしたミスを極力防いでいるという。また、いくら予定を決めていても、その通りに作品が完成するとは限らないのがクリエイティブの常。制作に集中しているときに会議や打ち合わせなどが入るとクリエイティブな思考が途切れてしまうため、「制作に没頭する日は他の予定を入れない」といった調整も必要となる。「自分がそうなら他のクリエイターもきっとそうですから、集中している人に話しかけるタイミングなどはかなり空気を読むようになりましたね」と塙さんは笑う。
今後、ゲーム業界を目指す後輩に塙さんが伝えたいのは「ゲーム業界は楽しい」ということ。ただし、何もせずに夢がかなうほど甘い世界ではない。
「学生生活は遊ぶことも大事ですが、やるべきことはやって後悔はしないように。そして、いつか一緒にお仕事できる日を楽しみにしています」。
- 塙 大輝(はなわ だいき)
- ミュージック学科/2015年卒業
- KLab株式会社 クリエイティブ部/サウンドディレクター
- 2015年にHALを卒業後、株式会社カプコンを経てKLab株式会社に入社。『キャプテン翼 ~たたかえドリームチーム~』『幽☆遊☆白書 100%本気(マジ)バトル』等の音楽や効果音制作を担当。HALではサウンドミドルウェア「Wwise」の特別講義実施実績もある。
- KLab株式会社
- モバイルオンラインゲームを開発・販売。代表作に『ラブライブ!スクールアイドルフェスティバル』『キャプテン翼 ~たたかえドリームチーム~』『BLEACH Brave Souls』などがある。
※卒業生会報誌「HALLO」72号(2018年11月発刊)掲載記事