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サポートは、頼りにされる医者。
対話力と提案力で解決へ導く。

IT/WEB/AI

日本マイクロソフト株式会社
荒井康彦(サポートエンジニア)

コンピュータのサービスやソフトウェアを利用するにあたって、必ず必要とされる仕事にサポートがある。
ユーザにとってトラブルが不意に訪れるように、いつ、どんなヘルプがやってくるかわからないのがサポートエンジニアの仕事だ。解決に導くためには何が必要で、いったいどうすればその力が培われるのか。世界最大のコンピュータ・ソフトウェア会社マイクロソフト社の日本法人に勤務する荒井康彦さんに、話をうかがった。

技術職だが、求められるのはむしろ想定する力や
コミュニケーション能力

マイクロソフト社といえば、PCユーザでその名を知らない人はいないだろう。HAL卒業生の荒井康彦さんは現在、サポートエンジニアとして活躍している。

「企業のお客様から個人の方まで、毎日たくさんの問合せをいただきます。不具合があって連絡されているわけですから、あせっている方も多く、丁寧に解きほぐし、解決に導いていきます」

まず求められるのは想定力だという。

「“アプリが止まった!”といった短い言葉で訴えてこられる方が多いので、お客様がどんな状況にあるのかを類推し、最適な解決法を探って行く必要があります。まずは想定する力がないと、この仕事は難しいですね」

荒井さんは、自分の業務を医者の仕事に例えて考えている。体の具合が悪ければ、私たちは「人体」の専門家である医師の許を訪ねる。「お腹が痛い」としか言えない私たちに、「どんなふうに痛いのか」「いつから痛むのか」など様々な対話から状況を推し量り、診察を経て処方していくその仕事は、「人体」を「コンピュータ」に置き換えれば、まさにサポートエンジニアの仕事そのものだ。

「まずここを診て、次にこうして、最終的にこうなるようにしていきましょうとご説明して、協力してもらえる関係性を築くことが大事です。今までの人生経験で、どう他人を説得してきたかが役に立ちますね」

「ワンマイクロソフト」の言葉のもと
あきらめは絶対に許されない

荒井さんがメインで担当しているのは、ソフトウェア開発スイート「Visual Studio」。アプリケーション開発に「Visual Studio」を活用している企業は多く、その不具合が、製品をリリースするにあたって致命的な時間のロスともなりかねない。

「“このシステムが動かないと、1時間あたり数億円の損益が出てしまう!”。実際、そのような危機的な状況は起こりうるわけです。もちろんチームを組んで業務にあたりますし、国外のエンジニアにも応援を求めます。私たちには“ワンマイクロソフト”という言葉があって、これは性別も年齢もキャリアも国籍もすべて超えて、皆が一丸となって解決に向けて努力しようという意味。日々、助け合って業務に取り組んでいます」

トラブルが起きた時、サポートエンジニアこそが最後の砦であり、だから速やかに解決できた際の達成感は大きな喜びになる。

「原因をすばやく突き止め、短期間でビシッと解答をたたき出すことができた時は、“やった!”という高揚した気持ちになります(笑)。本当の意味で必要とされる仕事だという実感が持てます」

けっしてあきらめることが許されないのがサポートエンジニアだ。

「“わかりませんでした”というお答えをすることはありません。最終解決まで行けない場合でも、ギリギリの次善の策を必ず提示する。あきらめることが許されないから、あきらめない。それが私の仕事です」

悩むより動け判断するのはその後でいい

どんな複雑なシステムも基礎の上に構築されたものであり、荒井さんを支えているのは、HALで学んだ知識が血肉化したものだ。

「OSのソースレベルで言えばC言語で書かれたソースになるわけで、ベースになるのは基本的なプログラミングの知識です。“メモリのアクセス違反”というエラーが出ても、コンピュータがメモリというものをどう使っているのかという根本を理解していないと話になりません。こうしたことはすべてHAL時代に学んだことで、それがなければ、OSの深いコードまで読み込んでいくような仕事にも就けなかったはずです」

学生にとって大切なことを、荒井さんは2つ挙げてくれた。やりたくないこともやってみること。考えるよりも行動に出ること。

「“やりたくないな”と感じることでも、やれる環境があれば、トライしてみるべきです。HALには様々な個性がひしめき合っているし、設備も充実しているから、なんだって可能なはず。就職に際しては、“適性が見つけられない”と悩んでいても進まないので、少しでも興味がある仕事なら、飛び込んじゃえ、と言いたいですね。“ここじゃないな”と思ったら、その職場で学べるものをキャッチしてから、次のステップに移ればいい」

荒井さん自身、社員数100人規模の開発系企業を経て、見事にチャンスをモノにして、日本マイクロソフトに転進した経歴の持ち主。その言葉には説得力がある。

悩むより、動け。それが、コンピュータ・ドクターからのメッセージである。

日本マイクロソフト株式会社
http://www.microsoft.com/ja-jp/default.aspx
Windows 製品全般やMicrosoft Officeスイートなどのソフトウェア、サーバ製品、ソリューション、ビデオゲームシステムなどをワールドワイドに提供する世界最大のコンピュータ・ソフトウェア会社マイクロソフト社の日本法人。2012年秋には「Windows8」が新登場。

※卒業生会報誌「HALLO」66号(2012年6月発刊)掲載記事