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5G×Unreal Engineだから
実現できる新時代のエンタメをつくりたい

GAME
中村 匡彦
株式会社 Indie-us Games
代表取締役
ゲーム制作学科卒/2008年卒業
※現・ゲーム4年制学科ゲーム制作コース

各業界が注目のゲームエンジン「Unreal Engine」の第一人者

「Unreal Engine」と聞いて何のことかすぐに思い浮かぶのは、おそらくゲーム業界関係者だろう。海外のゲームメーカーEpic Games,Inc.が開発したゲームエンジンで、『ドラゴンクエストXI』などビッグタイトルにも採用されている。

そんなUnreal Engineの国内第一人者として知られるのが、株式会社Indie-us Games代表取締役の中村匡彦さんだ。Unreal Engineが無償化された2015年頃から利用を始め、SNSなどで積極的に情報を発信。関連書籍も数多く出版しており、学習支援サービス「Udemy」では学習用の動画も公開している。日本におけるUnreal Engineの普及に大きく貢献してきた人物なのだ。

 そもそもゲームエンジンとは何か。ゲームエンジンとは、ゲーム表現における共通の処理をすばやく開発できるようにパッケージ化した開発環境のことで、なかでもUnreal Engine が得意とする映像処理は、ゲーム以外にも活用できるため、様々な業界から注目を集めている。「Unreal Engineは映像表現のクオリティが高く、それでいて処理速度が非常に速いので、ゲーム制作にとどまらず、アニメなどの映像作品や建物を新築する際のCG制作にも活用されています。たとえばバーチャルで住居内の内装を変える、家具を置く、といった処理はゲーム的ですよね。そうしたインタラクティブ性はUnreal Engineの得意とするところなんです」。

5GとUnreal Engineは社会を大きく変えるかもしれない

Unreal Engineの可能性は無限大だ。中村さんが期待するのは、次世代の通信規格である5Gとの組合せである。「たとえばVRは性能を高めるためにケーブル接続が必要ですが、5Gが普及すればワイヤレスでハイクオリティなバーチャル空間をつくり出せるかもしれません。さらに、VR の映像をUnreal Engineで制作すれば、映像に触れたり動かすこともできる。5Gと組合せることで高度なMR(ミックスド・リアリティ)が実現できる可能性だってあるのです」。

5GとUnreal Engineは社会そのものを変えていく可能性もある。近い将来、AIなどのに技術によって、現実世界からの膨大なデータがバーチャル空間で解析・処理され、再び現実世界にフィードバックされる。それはまさに5GとUnreal Engineが得意とする分野だ。

「すでに様々な取り組みが始まっています。 たとえば、2019年に開催された『FUJI ROCK FESTIVAL』の公式アプリ『FUJI ROCK'19 EXPerience by SoftBank 5G』。ソフトバンク株式会社が5Gのプレサービスとして提供したアプリで、同社の5Gネワークで現地から届けられる画像を解析し、会場の様子をCGで臨場感たっぷりに再現します。ユーザはその中を自由に動き回り、『FUJI ROCK FESTIVAL』をバーチャル体験できるんです」。実はこのアプリのバーチャル空間をUnreal Engineで制作したのが中村さん。そんな経験から、5GとUnreal Engineが生み出す可能性を誰よりも強く感じているのだ。

本気で勉強に向き合った4年間、HALで花開いたリーダーの資質

マルチクリエイター、そして会社経営者として八面六臂の活躍を見せる中村さんだが、実は子どもの頃はおとなしく引っ込み思案な性格だったという。ゲームクリエイターを目指したのは高校時代。大好きなゲームをつくる仕事に就きたいという思いから、HALへの入学を決めた。「特に担任の先生にはとてもお世話になりました。困ったときは相談して、励ましの声をかけていただきました。また、外部講師として来られていたゲームディレクターの方には、毎回授業で開発の生の声を聞かせていただき、それがとても楽しかったです。今も憧れの存在ですし、大きな影響を受けました」。

良い思い出も多い学生生活だが、順風満帆というわけではなかった。チームで作品制作を行うイベント『HAL EVENT WEEK』では、リーダーが突然辞めてしまうという出来事があり、中村さんは窮地に追い込まれた。「結局、ほぼ1人で作品制作を進めて提出したのですが、それが教訓となって『HAL-MODEフェスティバル(現・未来創造展)』では自らがリーダーになったんです。そこから周囲を引っ張っていく役割にまわりましたね」。

会社経営者やクリエイターとしての仕事だけでなく、現在はHALで講師も務めている中村さん。学生たちにUnreal Engineの使い方をレクチャーするほか、教材動画の制作や解説本の執筆など次世代のエンジニア育成に力を注いでいる。「Unreal Engineは高い技術レベルが求められるツールで、他のゲームエンジンに比べて情報もまだ多いとは言えません。今後も普及に貢献し、ますます盛りあげていければと思っています」。

ゲームが好きという気持ちからスタートした夢は、マルチクリエイターという形で花開いた。夢を実現できたのは「どれだけ辛くてもやり続けたから」だと中村さんは語る。「ゲームが好き。好きだからより良い仕事環境をつくりたい。そんなふうに突き詰めていけば、今よりもっとすごいことが実現できるようになっていくはずです」。

次世代の技術で進化を遂げる未来。その最先端に中村さんはいる。

「自分が本当にやりたいことを見つけて、それにチャレンジしてステップアップしてほしい。そのためには基礎が大切。その技術をHALで身につけてください」。

中村 匡彦(なかむら まさひこ)
ゲーム制作学科卒/2008年卒業
※現・ゲーム4年制学科ゲーム制作コース
株式会社 Indie-us Games
代表取締役

HALを卒業後、プログラマーとして複数のゲーム会社で勤務後、独立。フリーランスで活躍した後、2017年に株式会社Indie-us Gamesを起業。Unreal Engineの第一人者として知られており、業界では「Unreal Engineといえばalwei(中村さんのWEB上の活動名)」といわれるほどの存在である。これまでクリエイターとして携わってきた作品に『マリシアス』『剣と魔法のログレス』などがある。