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HALで学んだのは「絆」の大切さ。
それが今の自分を支えている。

IT/WEB/AI
稲本翔大
富士ソフト株式会社/システムエンジニア
ロボティクス学科(現 先端ロボット開発学科)/2010年卒業

HALで組込システムの技術を身につけ、富士ソフト株式会社で組込システムエンジニアとして働く稲本さん。
学生時代から周囲をまとめるリーダー的存在であり、そのコミュニケーション能力は現在でも大いに活かされている。
そんな稲本さんの仕事における哲学とは何か。インタビューを進めるうち、稲本さんが学生時代に培った「人間力」の一端を垣間見た。

リーマン・ショックの影響もなく希望通りに就職を決めた

ソフトウェアの開発・販売を行う富士ソフト株式会社に勤務して5年目になる稲本翔大さん。高校卒業後にHALに入学し、ロボティクス学科(現 先端ロボット開発学科)で技術を身につけた。現在はコンビニエンスストアなど様々な場所に設置されている複合機に関する仕事に携わっている。

「複合機の外部公開APIインターフェースをつくるというのが現在の仕事です。たとえばコンビニに置いてある複合機には画面があって、ユーザはそれをタッチして操作しますよね。だけど、あの画面を動かしているOSと、複合機自体を動かしているOSは実は別物なんですよ。私はその2つをつなぐ、目に見えないシステム部分をつくる仕事をしています」

API(アプリケーションプログラミングインターフェース)とは、機能を外部から呼び出して利用するための仕様のことだ。メーカーが発売する複合機には必ずそうしたAPIが用意されており、これを使うことでコンビニ各社はオリジナルの操作画面を開発することができるのだ。こうしたシステムを"組込システム"と呼ぶ。稲本さんが携わっているのは、まさにこの部分である。

リーマン・ショックをものともせず、あっさりと第一志望の富士ソフトに就職を決めたという稲本さんだが、そもそもなぜHALを選び、現在の道に進んだのだろうか。

「もともと、高校時代から個人でウェブサイトをつくったり、知り合いのお店のウェブサイト制作をしたりして小遣いを稼いでいたんですよ。なので、将来は興味のあるPCを使った仕事に就けたら良いなとは思っていました。進学を考えHALの体験入学に参加したときに、情報処理が一番就職に強いと聞いたので、迷わず入学を決めました」

リーダーとしてチームをまとめ卒業制作展を成功に導く

稲本さんの在学時は3年生ときに2つの分野へとコースが分かれた。ウェブサイトやソフトウェアの開発などがメインとなる情報処理分野と、組込システムに特化したロボット分野だ。HAL入学前からPCに触れ、すでに基本的な情報処理技術を身につけていた稲本さんは、「新しいことをやってみたかった」という理由で、ロボット分野へ進級することを決めた。

「HALでは、物が動く仕組みを基礎から学ぶことができました。それが今の仕事につながっていると感じています。たとえば初めて見る製品でも、どういう仕組みで動いているかがだいたいわかります。学生のときに学んだ知識や経験が活きていますね」

しゃべることが大好きでコミュニケーション能力に優れた稲本さんは、複数人で開発する場合でもチームのまとめ役になることが多かった。卒業制作展でもチームリーダーとして全体を統率し、工程管理やメンバーの人間関係の調整役として活躍した。とはいえ、決して楽な役目ではなかった。卒業制作展のテーマであった絆・コミュニケーションを表現しつつ、先生からは学科の色も出すことを求められた。

「組込システムというのは目に見えない部分。それなのにそんなテーマで学科の色を出せと言われても……と揉めましたね(笑)。それでも先生からアドバイスをいただいて、最終的に皆でジャンプすることでスロットマシンを動かし、ポイントを溜めて地震や火山の噴火を止めるという体感ゲームをつくりました」

稲本さんらが展示した体感ゲームは参加者の注目を集め、制作展は大成功を収めた。その後、担任の勧めもあり、就職活動では富士ソフトを第一志望としてエントリー。リーマン・ショック直後の厳しい状況にも関わらず、見事に就職を決めた。稲本さんの歩みを支えたのは、彼自身が持つ「人間力」=「絆」だった。

「人間力」を身につけるためには普段から人に興味を持つこと

「人間力とは、自分は何ができるのか、そして周囲の人は何ができるのかを知っておくこと。自分が何でもできるパーフェクトな人間なら、それでも良いのかもしれません。でも、パーフェクトになれないとしても、誰が何をできるのかを知るだけで、仕事力は何倍にもなるのです」

自分と周囲について知ること。そのために稲本さんが普段から心がけているのは、「人に興味を持つこと」だ。そのためには、上司から言われた仕事だけをやっているのではダメだという。「部下は自分の仕事をするために、上司をうまく使わないとダメ。そのためにはちゃんと上司の仕事ぶりを見ることです。上司の得意な仕事があれば、それを教えてもらえば良いわけですから」

また、学生時代の友人も貴重な財産になっていると稲本さんはいう。「社会人になってから友だちはとくに大事になってきますよ。新しい仕事をしようとしてもメンバーを集めるのは大変ですが、学校の友だちは同じ分野で勉強してきたのでやりやすいです。それに、共感し合える学生時代の友だちだからこそ、こぼせる愚痴もありますからね(笑)」

入社後から現在に至るまで、複合機の仕事に取り組んできた稲本さんだが、今後は新しいことにも挑戦してみたいと目を輝かせる。「学生時代にグループ開発でロボットをつくったことがあるんですよ。結局、それはうまく動かなかったのですが、今もロボットをつくりたい気持ちはあります。今後はロボット製作にも関わっていって、将来はガンダムをつくって、一番最初に乗りたいです(笑)」

稲本さんなら本当に実現させるかもしれない——そう思わせられるのは、彼の"人間力"のなせるわざだろう。

稲本翔大
ロボティクス学科(現 先端ロボット開発学科)/2010年卒業
高校卒業後、HAL大阪に入学し、ロボティクス学科で学ぶ。卒業制作展ではチームリーダーとしてプロジェクトをまとめた。2010年3月に卒業後、富士ソフト株式会社に入社し、複合機を中心とした外部公開APIインターフェースの開発に携わっている。
富士ソフト株式会社
http://www.fsi.co.jp/
1970年創業。グループ全体で1万人以上の技術者を抱えており、事業領域は通信インフラ、社会インフラ、機械制御などの組込系ソフトウェア開発の他、業務系ソフトウェア開発やネットビジネスソリューションまで幅広い。どの企業グループにも属さない独立系の企業として日本最大級。

※卒業生会報誌「HALLO」68号(2014年11月発刊)掲載記事