ユーザを喜ばせることを
最大の喜びにできるのが仕事だ。
スウェーデンからやってきて、1年間のつもりがHALに進学、さらに就職までしてしまったルドウィグ・フォシェルさん。ゲームのサウンドクリエイトに魅了された理由や、今取り組んでいる仕事に向かう姿勢などをうかがった。
HALに入学したことでチャンスをモノにできた
目の覚めるような金髪・碧眼。でも、口を開くときれいな日本語で、熱くゲームや音楽について話す。ルドウィグさんは、どうして日本にやってきたのだろう。
「子供のころからゲームが好きで、日本に行きたいと思っていました。アルバイトをしてお金を貯め、最初は1年間だけの滞在のつもりでしたが、気がついたらゲーム会社で働いている(笑)! 僕のチャンスが大きく広がったのは、HALのおかげです」
高校生まで音楽を学んでいたルドウィグさんは、ミュージシャン養成の学校も覗いてみたものの「向いていない」と判断。そんな時、HALのCMを見てミュージック学科があるのを知り、ゲームと結びついたサウンドクリエイトを学べると考えた。
「演奏よりも作曲をやりたい気持ちが膨らんでいたし、ゲームもずっと好きだったので、こんな学校があるんだ! と驚きました。今でもHALでお世話になった先生方やクラスメートとは、様々な交流があります」
魂を込めることと求められるものをつくること
HALで学んだことの中で、強烈に焼き付いている言葉があるという。
「“技術が未熟でもいい。とにかくまず、魂の叫びを音にぶつけなさい”。先生からそう言われました。この言葉のおかげで、友人たちとアルバムづくりをする時も、お互いがつくった曲を聴いて、甘い部分を指摘し合うような有意義な時間が持てました」
魂を込めること。しかし、商業ベースでサウンドをつくる時、それが何を意味するか、ルドウィグさんは冷静に見究めてもいる。
「ゲームに音楽をつける場合、いちばん大切なのはユーザさんです。ゲームの世界にスッと入っていけて、しかも音楽でもっと楽しんでもらえることを目指さないといけない。そこに自分の魂を10%、込める。20%込めたら、合せにくくなるかもしれない。常に、そんなことを考えています」
コンセプトを理解する能力こそがユーザを満足させる
ルドウィグさんは、サウンドクリエイトはアーティストの仕事ではないと言い切る。
「表現をしたくてアーティストの道に進むのもいいでしょう。しかし、ユーザさんに受け入れられる音楽をつくりたいなら、表現とはまた別の仕事だということを意識しておく必要があります。最も重要なのは、ゲームのコンセプトをきちんと理解し、その世界と調和したサウンドを提案することですね」
コンセプトをしっかり理解する力が、自分の曲をプレゼンテーションする能力につながってく。
「面接の際、“あなたはどういうコンセプトでこの曲をつくりましたか?”と必ず聞かれます。それは自分の言葉で説明できないといけないですね。HALはプレゼンについても教えてくれる学校ですから、しっかり学んでください」
「自分はとても恵まれている」と謙遜するルドウィグさん。しかし、故郷を遠く離れ、異国の地で不安の中、努力して勝ち取った仕事であることは、言うまでもない。
株式会社コナミデジタルエンタテインメント
コンシューマ向けコンピュータゲームをはじめ、アーケードゲーム、ソーシャルゲーム、キャラクター・グッズの開発・販売などを行っている。ステルスゲームの「メタルギア」シリーズや、ソーシャルゲーム「ドラゴンコレクション」など、多岐に渡るジャンルで多様なゲームを提供し続けている。
※卒業生会報誌「HALLO」66号(2012年6月発刊)掲載記事