現実世界を超えるリアリティをアニメーションで表現する
岩頭 千春
株式会社ぴえろ
デジタルアニメーションルーム 撮影
CG・デザイン・アニメ4年制学科 CG映像コース/2016年卒業
迷ったときには困難な方を選ぶ
もともとアニメが好きで、何となく「将来はアニメ業界で働けたらいいな」と考えていました。でも、そのために何が必要なのかが分からなくて、とにかく基礎から勉強しようとHALに入学しました。勉強する中でCMや映画などいろいろな選択肢を知り、その上で、やっぱりアニメの仕事がしたいと再確認することができました。
撮影という仕事を知ったのもHALに入ってからです。どんな道に進もうか悩んでいたときに、先生から「撮影はどう?」とアドバイスをもらい、調べるうちに「これだ!」と思いました。もう一つ印象に残っている在学中のエピソードが、クラスメイトの「迷ったら困難な方を選ぶ」という言葉です。進路に迷い、本当にこの道でやっていけるのか自信を失いかけていたときに、この言葉に背中を押してもらいました。
当時からずっと続いている習慣が、「いいな」と思った画像を集めることです。実写、イラストに関わらずインターネット検索やSNSなどで画像を探して、自分の引き出しを増やすようにしています。いいなと思うポイントはそれぞれ。純粋にきれいなものから、技術の高いもの、自分だったら絶対に描かないと思うような作品にも惹かれますね。制作の工程を知りたくて、真似して自分でつくってみることもあります。
試行錯誤の末辿り着く新しい表現
アニメの撮影とは、キャラクターや背景といった素材を組み合わせ、さまざまなエフェクトを加えて映像データに仕上げる工程です。通常のカットをいかに違和感なく、また盛り上がるシーンをいかに盛り上げて見せるかが私たち撮影の役目です。
打ち合わせ段階では絵コンテからイメージを膨らませていかなければいけないので、大変なことも多いですね。「情緒がある感じ」「かっこよく」など、ハッキリと言葉にできないような表現を求められることもしばしばです。たとえば、今携わっている『BORUTO』はバトルアクションなので、ストーリーの中で新しい技が登場するときはいつも悩みます。ベストな答えに辿り着くまでには長い時間がかかりますが、試行錯誤の末、何とか道筋が見えたときには非常に大きな達成感とやりがいがありますね。
ここ最近は、“きれいな映像”に対するハードルが急激なスピードで上がっているのを感じます。リアルを超えて、人の心に訴えかけるような映像が求められているのかもしれません。私は、自分自身のことを良くも悪くも平凡だと思っています。平凡ということは、大多数の視聴者に近い目線で作品を作れるということ。その感覚をいつまでも忘れずに、良いものを素直にどんどん取り入れていきたいです。とにかく今は、もっと経験を積み、判断力を磨いていきたいですね。
株式会社ぴえろ
デジタルアニメーションルーム 撮影
CG・デザイン・アニメ4年制学科 CG映像コース/2016年卒業
アニメ業界への漠然とした憧れを抱きつつ、「いろいろな経験をしてから将来の道を決めたい」との思いからHALに入学。在学中にアニメ撮影の仕事を知り、進路を調べた中で一番興味を惹かれたため目指すことに。卒業後は株式会社ぴえろに入社。撮影(コンポジッター)として『NARUTO -ナルト- 疾風伝』『パズドラクロス』に携わりつつ、線撮(着色前の原画などを撮影し映像にする工程)管理を担当する。
現在は『BORUTO -ボルト- NARUTONEXTGENERATIONS』(2017年4月5日~テレビ東京系にて放送中)の本撮管理を経験。2020年からはチーフを務めている。
NARUTO NEXT GENERATIONS
2017年よりテレビ東京系で放送中のTVアニメーション。前作の『NARUTO-ナルト- 疾風伝』から十数年後を舞台に、交通機関などのテクノロジーやハンバーガーなどの食文化が発達した世界に生きる、新世代の忍たちの活躍を描く。
2015年に公開された『NARUTO-ナルト-』を原作とする劇場版アニメーション『BORUTO -NARUTO THE MO VIE-』を原点とし、その公開2年後にTVシリーズとしてスタートした。
登場キャラクターが忍者という設定ならではの、迫力のあるバトルシーンや技の応酬なども見どころのひとつ。
TVアニメを中心に多くの作品を制作するアニメ制作会社。TVシリーズを中心にOVA(オリジナルビデオアニメーション)、劇場版、TVスペシャル版、教育ビデオなど数多くのタイトルを制作。日本のみならず世界に向けて映像を展開し、その映像をコンテンツとした幅広い分野での商品化・事業化も行っている。代表作に『NARUTO-ナルト-』『BLEACH』『暁のヨナ』など。