大卒から学び直して開いた
CGデザイナーへの扉
山口 朋子
株式会社スクウェア・エニックス デザイナー(モーション)
CG学科/2018年卒業
『ファイナルファンタジー』の
モーションデザイナーとして活躍
1987年に第一作を発売以来、常に世界的に注目されている大作RPG『ファイナルファンタジー』。現在入社4年目で、最新作のモーションデザイナーを務めているのが、HAL卒業生の山口朋子さん。モーションデザイナーとは、ゲーム内のキャラクターの個性やシーンに合った動きを考え、つくり込むプロフェッショナル。ゲームの臨場感や操作感、面白さを左右する重要な仕事だ。「キャラクター同士の会話イベントのモーションを中心に、ゲーム進行中に発生する様々なイベントの動き、たとえば、街中でNPC(Non Player Character=プレイヤーが操作しないキャラクター)が言い争っていたり、駆け寄ってきたりといった動きなども作成しています」と山口さん。この仕事でやりがいを感じる瞬間を、次のように語る。
「シナリオで伝えたいことや、キャラクターの魅力をイベントの中で表現できたときですね。どんな動きや演出にするかの裁量はモーション担当者にあることも多いので、シナリオを見て、例えばこれはキャラクターの可愛さを見せられる絶好のシーンだなというような見せ場では、絶対つくり込んで表現してみせるぞって思いますし、それを自分の仕事として作品に残せることは1番のやりがいだと思います」。
CHARACTER DESIGN: TETSUYA NOMURA/ROBERTO FERRARI
本当にやりたい仕事を求めて
大学卒業後、大きく方向転換
今では第一線で活躍している山口さんだが、意外にもここにたどり着くまでには、迷いながら回り道をしてきていた。 「HALに入る前は、美術系の大学で建築を専攻していました。でも、就職活動を迎えたときに、建築の仕事はやりたいこととは違うのではないか。本当にやりたいことでなければ続けられないのではと不安に感じたんです。振り返ってみると在学中に他の方向を受けてみるという選択肢もあったのですが、就職するなら建築だと思い込んでしまっていて、そのまま卒業してしまいました」。
その後、独力で本当にやりたい仕事を求め、2年ほどを過ごしたが、なかなか道は拓けず、たどり着いたのがHALだった。 「やはり就職支援に力を入れているのと、知人が先に通っていた安心感もあり、HALで学び直すことにしました。入学した年齢が遅いこともあり、自分の現状からでも実現性のある進路をと考え、美術系の経験が活かせそうなCG、中でも自分の好きなゲーム業界を目指して頑張ることにしました」。
HALの刺激あふれる環境で
目標をかなえる道が見えた
意を決しHALに入学した山口さん。当時の印象を次のように振り返る。「私は2年制に在籍していたのですが、進級制作展などでは4年制の学生の完成度の高い作品を見ることができ、とても刺激を受けました。頑張り次第で達成可能な技術レベルとして目標にできましたし、実際に同じ時期に卒業するライバルでもあるので、いい意味で焦りを感じさせられました」。
大学卒業後に入学することに抵抗はなかったのだろうか。「最初はちょっと不安でした。やはり18歳くらいの人もいて気まずさもあったのですが、大学を卒業した人もいたり、留学生で少し年上の方もいたり千差万別で、年齢をネックに感じずに学生生活を過ごせました」。
HALなら、様々なバックグラウンドと特技を持った仲間が集まって切磋琢磨できる。 「卒業制作では、プロジェクションマッピングで映し出した画面でゲームをするという作品をつくりました。看板などはグラフィック専攻、ゲームのデザインは私を含む3DCG専攻メンバー、仕組みはプログラミングのできるメンバーがいたのでお願いして、チームで取り組んでとても楽しかったですね」。
頑張りが結果に表れるからこそ
努力し続ければ夢はかなう
就職に向けては、エントリーシートの書き方やマナーなど、独学ではなかなか学べないことも学べ、とても役に立ったという山口さん。就職の準備は、必修の授業を浴びるように受けているうちに勝手に準備ができていたそうだ。そして、志望していたスクウェア・エニックスへ。入社後も、HALで学んだことが役に立っているという。
「仕事では、どうすれば楽しんで進められるか考えるようにしています。受け身でやるのではなく、仕事の面白いところを見つけるようにするんですね。CG学科では志望する3DCG以外も課題がたくさんあり、それならポートフォリオ作業を優先させたいと感じることもありました。でも、そこでやりたくないと半端な取り組み方をするとせっかくの学びの機会を無駄にしてしまいます。ですので、グラフィック課題なら、興味のある地図のデザインにしてこだわりを入れようとか工夫していました。こういった“やらなきゃいけない作業をやりたい作業に変えること”は今も役立っていると思います。それは、ポートフォリオづくりの指導で、『自分の得意なことが伝わるように自分に関連のある作品を入れた方がいい』と先生からアドバイスを受けたときに気づいたことです」。
最後にこの業界を目指す人たちにこんなメッセージを贈ってくれた。
「CGは実力をつければ新卒以外にも門戸の開かれた業界だと思いますし、HALは覚悟を決めて就職まで集中してやる気持ちさえあれば、ちゃんと結果が返ってくる場所だと思います。特に2年制は、時間が短くてかなり努力が必要ですが、それさえできれば道は拓かれると思います」。
株式会社スクウェア・エニックス
デザイナー(モーション)
CG学科/2018年卒業
大学卒業後、CGデザイナーを目指してHALのCG学科に入学。卒業後、株式会社スクウェア・エニックスに入社。『ファイナルファンタジー Ⅶ リメイク』『ファイナルファンタジー Ⅶ リメイク インターグレード』のモーションデザイナーとしてイベントモーションを担当。
『ドラゴンクエスト』シリーズや『ファイナルファンタジー』シリーズなどで知られる日本屈指のゲームメーカー。エニックスとスクウェアの合併により誕生した。数多くのスタークリエイターを輩出し、現在もプラットフォームを問わず多数のヒットタイトルを生み出し続けている。