News |

『日本ゲーム大賞』受賞の経験が、今に活きている。

GAME

イレネ・ヘルセノウイス
任天堂株式会社 プログラマー
ゲーム制作学科(現・ゲーム4年制学科 ゲーム制作コース)/2018年卒業

デザイナーの業務効率を上げるプログラムを提供

任天堂でプログラマーを務めるイレネ・ヘルセノウイスさんは異色の経歴を持つ。出身はメキシコ。ゲーム・アニメの影響で幼少から日本に関心に寄せるも「遠い国。一生行くことはないと思っていた」とイレネさん。ところが、大学の卒業旅行で日本を訪れることに。「すごく感動した」というこの旅が転機となった。メキシコではゲーム開発者をめざす場合、ほとんどがアメリカやカナダに渡るそうだ。ちょうど進路を思案していたタイミング。どうせ国外で働くなら日本がいいと決断し、HALに入学した。

イレネさんの担当はプログラマー。その中でも、社内でデザイナー向けのツールなどを作成する仕事で、業界ではグラフィックスプログラマーあるいはテクニカルアーティストとも呼ばれる職種だ。
「主にデザイナーの業務効率を引き上げるための仕事をしています。例えば、デザイナーがつくったモデルをゲームの都合でスケールを変更する必要があるとします。一つのモデルだけならデザイナーに対応をお願いしますが、数百個のモデルになると手動で行うのは非常に手間がかかりますので、私が提供するプログラムやスクリプトによって自動化を図るといった業務です。一言で説明しがたい仕事内容ですが、自分の貢献でデザイナーの仕事効率化を支援でき、結果的にゲームのクオリティ向上に繋がるので、すごく嬉しいことです」。

在学中に『日本ゲーム大賞 アマチュア部門』で大賞を受賞

HAL在学中には、同級生チーム6名で開発したゲームが、東京ゲームショウ『日本ゲーム大賞2016 アマチュア部門』大賞を受賞。応募総数が過去最多だった(当時)中での大賞という快挙だった。
「大賞は結果が出た1つの経験。HALで学び、今の自分に影響していることを振り返ると、日々の授業はもちろん、ゲーム業界出身の先生から直接話が聞けたことが大きかったです」。
HALの教員は業界人の視点で学生と関わる。
「ゲームづくりは楽しい。それは事実なのですが、様々な苦労も乗り越えなければ良い作品はつくれません。先生の話を通じて、そうした仕事に対する現実的なイメージを持つことができました」。
チーム制作も印象に残っているようで「チームで協力して本格的に作品を制作する体験ができました。自分の力だけではなく他者の力を借りることで、一人ではつくれなかったものができることを実感。そうなると、もっといい作品を手掛けたいという意欲が高まっていきました」。

参考:日本ゲーム大賞 https://awards.cesa.or.jp/
参考:日本ゲーム大賞受賞インタビュー 
https://www.famitsu.com/news/201609/26116668.html

プログラマーをめざして学んでいたイレネさんだが、日本ゲーム大賞を取ったチームでの役割はプランナーとサブリーダーだった。プランナーとしてはステージ制作などを担当。サブリーダーとしては進捗管理などのまとめ役を果たした。
「プログラマーをやりたい気持ちはあったのですが、チーム制作では、それぞれの役割を見つけることが大事。チームとして足りていないと感じた部分を引き受けることにしました。『私が』ではなく、このゲームに何が必要なのかを考えた結果です」。
イレネさんはある仕事観を持っている。「自分は何をしたい、何ができるという動機は不要だと思っています。作品がすべて。自分にフォーカスすることなく全体の目的に力を注ぐことは、今でも常に意識しています」。
この仕事に対する姿勢は、学生時代のチーム制作で培われたのだった。

教員の一言がきっかけとなり、任天堂に応募

「取れば就職に有利だと考えた」と資格取得にも精力的に取り組んだ。基本情報技術者試験をはじめ、CG系の資格なども取得。HALでは基本情報技術者試験のため対策講座を開講している。「夏休みの対策講座にも毎日通っていました。資格を取れたのは丁寧な指導をしていただいたおかげ。自分だけの力では絶対に無理でした。基本情報技術者の知識は仕事にも役立っていて、実際に仕事を始めてから理解できるようになった知識もあります」。

日本のゲーム会社にプログラマーとして就職する。その夢を実現するための就職活動をスタートさせたとき、任天堂は念頭にはなかったそうだ。イレネさんは『ゼルダの伝説』シリーズが好きで、同社のファン。それでも、任天堂というビッグネームは「自分には遠い存在」だった。ところが、
「就職作品を評価してくださった先生が『任天堂に応募してみてはどうか』と言ってくださったのです。先生のあの一言がなければ、この会社をめざすこともなかったと思います」。
実はメキシコの両親も同社のファンで「両親は私が生まれる前から任天堂のゲームで遊んでいたほど。連絡したら大喜びしてくれました」と笑みを浮かべた。
HALの教員について「学生に対して手厚かった」と振り返るイレネさん。就職活動でもその「手厚さ」が任天堂への道をつないだ。

任天堂に入社して4年(取材時)と、業界ではまだまだ若手。これまでに担当した仕事で発売されたタイトルはまだない。イレネさんは今後の目標について、
「今の仕事はすごく楽しいのです。学べることが沢山あり、担当している仕事をこなせるようになりたいと考えています。ちょっと遠い夢になりますが、HAL時代に日本ゲーム大賞を受賞したときは、自らの世界観をゲームで描くことができました。そのときと同じように、いずれは仕事でも自分の世界観を反映したタイトルの開発に携わりたいと思っています」。
ゲームクリエイターとして着実に歩みを進める、今後のイレネさんの活躍にも期待したい。

PROFILE

イレネ・ヘルセノウイス
任天堂株式会社 ゲームプログラマー
ゲーム制作学科(現・ゲーム4年制学科 ゲーム制作コース)/2018年卒業

在学中に同級生と開発したゲーム「Trail(トレイル)」で『日本ゲーム大賞2016 アマチュア部門』大賞を受賞。HAL卒業後、任天堂に入社。現在、プログラマーとしてデザイナー向けのツール開発・導入を行う業務に従事している。


任天堂株式会社
1889年創業。家庭用ゲーム機の草分けである「ファミリーコンピュータ」の発売により、1980年代のファミコンブームを巻き起こす。その後も「ゲームボーイ」「ニンテンドーDS」「Wii」などを発売し、ゲーム業界を牽引してきた。2017年にはお客様のプレイスタイルに合わせて遊べる据え置き型ゲーム機「Nintendo Switch」を発売するなど、「人々を笑顔にする」ための体験を、世界中のお客様へ提供することに挑戦し続けている。