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4年間必死に課題に食らいついた日々が、毎週締切に向き合う漫画家としての土台に

CG/ANIMATION

ノ村 優介
漫画家

CGデザイン学科(現・CG・デザイン・アニメ4年制学科 グラフィックデザイン・イラストコース)/2009年卒業

人の心をつかむ絵づくりを細部にわたり追究

高校時代、友人が趣味で書いていた小説に、私が遊びで挿絵を描いてみたことが漫画に興味を持ったきっかけでした。そこで、思い切って「週刊少年マガジン」に読み切り漫画を描いて投稿したところ、運よく賞が獲れたことから、本気で漫画家を目指すようになりました。HALに進学したのは、デザインスキルも身につけておけば漫画に活かせるのでは?と考えたのが主な理由です。デビュー後、この選択は大正解だったと知ることになります。
2018年から連載が始まった『ブルーロック』ですが、読者を熱狂させるための工夫やアイディアは惜しみなく細部にわたり散りばめています。たとえば、当初から私が意識している点は、読者の「めくらせる手を止めさせない」こと。漫画は、自分でページをめくらなければいけない。これが意外にストレスになっていると思うので、無意識にどんどんページをめくれるよう、スピード感や「視線誘導」を意識して描いています。また、1話ごとにある「見せ場」を山の頂点に持ってくるようなページ構成を心がけています。
さらに「止め」や「ため」をつくって、読者の呼吸をコントロールしていく。すると漫画の世界に入り込み没頭してくれるんです。少年誌なので若い男の子が読んで単純に「かっこいい!」と憧れを抱いてもらえるような画も意識しています。
読者を虜にする要素として、金城先生の生み出すキャラクターたちの成長ストーリーもその一つだと思います。〝青い監獄〟計画(ブルーロックプロジェクト)の全権を持つ絵心甚八(えごじんぱち)が放つ「ことごとく常識を壊す」言葉に、これまでの価値観を崩され厳しい現実を突きつけられるキャラクターたち。そこにどう立ち向かうのか、考え苦悩しながら答えを出していく彼らに、読者たちは自分を重ね合わせ目が離せなくなるのでは、と思うんです。

HALで培ったデザインスキルが、アドバンテージ

HAL在学中に学んだデザイン知識は、漫画を描く上でさまざまな視点を与えてくれ、アイディアのストックを増やしてくれました。
『自分がつくるデザインは必ず誰かが見る、読む。いわゆる「ターゲット」が誰なのか?その人にどうアピールすると効果があるか?を考えなさい』という先生の言葉は頭に叩き込まれています。
当然、『ブルーロック』においてもターゲットを熟考しました。まず、サッカー漫画は既に世の中に素晴らしい作品があふれていたので、その中で新参の私が連載に挑むにあたり、既存作品と同じパフォーマンスをしても勝てないと予想しました。そこで、サッカー好きな人にもアプローチしつつ、サッカーを知らない人もターゲットにしてはと考えたのです。知識がなくても楽しく読めるものとして1段階ハードルを下げ、ターゲットを広げたことも、ヒットに繋がった大きな要因だと思います。
HALの広告の授業で学んだ、読ませるための構図や文字情報の位置、色についての知識も大いに役立っています。
企業がブランディングとして自社のカラーを決めるといった学びからも発想を得て、『ブルーロック』では読者に数あるキャラクターを覚えてもらうために、色分けして認識してもらう方法をとっています。
特に単行本の第1巻の表紙は、書店に並んだときに埋もれないように、工夫を重ねました。キャラクターの色(主人公の潔世一は蛍光グリーン)で瞬時に見つけてもらうことや、主人公が真正面を向いている構図で読者と目が合い留まるだろう、などと戦略を立てて描きましたね。
このような読者を魅了する見せ方を無意識でやっている漫画家の方もいるとは思いますが、私はHALで学んだ知識があるので、活用しない手はないだろうと「デザイン」で描く漫画を追究しています。
さらに在学中の学びで最も役立ったのは課題ですね。たくさんの課題をこなすのは大変でしたが、4年間必死で食らいついたあの経験は、現在、毎週、締切のある漫画家という仕事に取り組む土台と力を養ってくれたと思います。今、思うと即戦力となる人材へと育成してもらっていたのだろうと感じますね。

こちらがかなり力を入れて描いた第一巻の表紙。主人公の潔世一のカラーは蛍光グリーンで統一。瞬時に読者に見つけてもらう工夫の一つです。

ファンの熱狂がやりがい、とことん楽しませたい

毎週、締切に追われ、正直辛い時もあるのですが、それでも前向きにやっていける原動力は、やはり読者が喜んでくれるからですね。よく手書きのファンレターをいただくのですが、これはかなり胸に訴えるものがあります。SNSで手軽に伝えられるこの時代に、わざわざペンで書いて切手を貼って郵送してくれる。そんな手間暇かけて伝えてくれる言葉からは、熱い思いがひしひしと伝わってきて私を奮い立たせてくれるんです。
週刊連載なのでファンのレスポンスが早いことも魅力です。スタッフと一緒に必死に描いた原稿が数週間後には世の中に出回り、アニメ化されたおかげで海外の方からのコメントももらえる。世界中の方々が見てくれるというのは、本当に刺激的でモチベーションになりますね。

多彩なコンテンツで人々を魅了したい

今後は、HALで培ったデザインや広告のスキルを活かした、漫画以外の仕事にも携わりたいと思っています。『ブルーロック』がアニメ化されたときは、ただただ嬉しかったと同時に、アニメにも興味がわき、アニメキャラクターデザインやイラストの仕事もやってみたいと思ったんです。
広告や原画展など『ブルーロック』の絵で渋谷の街を埋め尽くす「渋谷ジャック」施策を以前行ったのですが、自分の絵が街中にあふれた世界を観たときは感極まりました。そんな人々を魅了する世界をこれからも生み出していきたいですね。

キャラクター「千切豹馬」が自分の過去やトラウマと向き合って覚醒していくストーリーの1シーンです。読者からの支持が高く、私も意識して力を入れて描いたので、絵を通じて思いが届いているんだと嬉しかったですね。

私が好きなキャラクター「馬狼照英(ばろうしょうえい)」です。俺様を主張する偉そうなキャラですが、自分のマイナスの面もしっかり捉えていてとても好きですね。人間味があるんです。

PROFILE
ノ村 優介
漫画家

CGデザイン学科(現・CG・デザイン・アニメ4年制学科 グラフィックデザイン・イラストコース)/2009年卒業

1987年、京都府生まれ。
2013年『砂人の皇』でデビュー。2018年より週刊少年マガジン(講談社)にて連載中のエゴイストサッカー漫画『ブルーロック』(原作:金城宗幸)がTVアニメ化も果たすヒット作に。2023年10月現在累計発行部数は2800万部を突破している。他の代表作に『ドリィ♡キルキル』(原作:蔵人幸明)など。

受賞歴

2007年 週刊少年マガジン新人漫画賞 特別奨励賞(『スカメ-Sky Messenger-』)
2010年 週刊少年マガジン新人漫画賞 佳作(『砂人の皇』)
2021年 第45回講談社漫画賞 少年部門(『ブルーロック』)