close background
close background
・CONCEPT BOARD・MODELING・PREVISUALIZATION・EFFECT ・CONCEPT BOARD・MODELING・PREVISUALIZATION・EFFECT
Kick Off
第参話 甘えの代償。
  • TEAM TOKYO
  • TEAM OSAKA
  • TEAM NAGOYA
TEAM nagoya篇
僕らはもう負けている

準備不足を痛感させられた初回チェックからわずか2日。
名古屋チームのもとに、TVCM制作を統括するクリエイティブ・ディレクターからメッセージが届いた。
その内容を見て、愕然とした。

「名古屋チームは、東京・大阪チームに比べて2、3歩遅れている」

ロボットのカラーリングを担当した神田明美は思い出していた。
彼女が自分のイメージだけで付けたカラーを、岩本監督が酷評したことを。

「すべての色に、すべてのデザインに、理由がなければならない。」
ロボットに詳しくないことを逃げ道にするな。
わからないなら考えろ。知らないなら、徹底的に調べろ―――。

悔しかった。情けなかった。そして、自分を変えようと思った。
ロボットに詳しいメンバーに相談した。
資料や他の作品を徹底的に分析し、そのカラーリングの理由を検証した。
すべてのものには理由がある。
CGは人の手で造られた虚構の世界。
だからこそ、そのリアリティを追求することに意味があるのだ。

image01
image02

「東京チームや大阪チームにできて、自分にできなかったこと。 これは、覚悟の差だ。」

12月、迎えた第2回チェック当日。
岩本監督の言葉には厳しい指摘だけでなく、評価が混じる。

そして、応える神田の言葉には、第1回のチェックにはなかった、強い信念がにじんでいた。

image03
変わらなければ、僕達に後はない

他チームの覚悟が自分たちより大きく上回っていることなんて、想像もしていなかった。
僕らは同じHALに通う学生なのだからと。
でも、それは違った。まざまざと思い知らされた。
彼らが競争相手だということ。
そして、自分たちがいるこの場所はもう、厳しいプロの現場なのだということに。

必要なのは、改革。
大阪チームが取り組んでいるという作業開始前後のミーティングを取り入れた。
他チームの真似をしなければならないことは、屈辱だった。
それでも、なりふり構っていられない。
PCの画面に表示された、つくりかけのモデルデータ。

image04
image05

他チームはどれだけのクオリティのものをつくっているのだろうか。
このままでは、今の小さな遅れはいずれ、取り戻せない大きな差になるだろう。
変われるだろうか。
いや、変わるしかない・・・?

「ここで変われなければ、僕たちは終わりだ。」

それでも、もし、変わることができなかったら。
自分たちのつくったTVCMは、オンエアされるのか。
「まだ間に合う」誰が誰にともなく、言い聞かせるようにつぶやく。
オリエン時からつきまとう、恐怖。
それを振り払うには、名古屋チームの“熱”は、まだどこか頼りないものだった。


その時、他の2校は・・・
TEAM TOKYO篇
きっと褒めてもらえると思っていた

多くの指摘を受けつつも、背景などを「カッコいい!」と称賛された第1回チェックは、自信になった。
自分たちはできると信じて、監督の指示を、確かに反映した、はずだった。

岩本監督が来校しての第2回チェック。
「できた」と思っていた箇所へ浴びせられたのは、賞賛ではなく、厳しい言葉。
「ここは、前回のほうがよかった。」その言葉に、打ちのめされる。

image06

自分たちの「できた」と、監督の、プロの「できた」の間にある、途方もない距離。
いや、もしかしたら、プロは「できた」と自分で手を止めてしまうことはないのかもしれない。
言葉にすれば簡単なのに、そんなことは自分たちには決してできないことのように思えた。


TEAM OSAKA篇
個性という武器、個性という壁

実はチェック後、打ち合せをする岩本監督らのもとを、背景を担当する山下隆が訪れていた。
「もっとこうしたほうがいい、と思うことを他のメンバーにどう伝えるか悩んでいます。
違う意見を言うことでメンバーの仲が悪くなってしまうことも怖くて…。
プロの方々はどうやって意思の統一を図っているのですか?」

image07

個人のスキルが高く、こだわりも強い大阪チームのメンバー。
ひとり1人の個性はプロに必要な素養であると同時に、彼らがチームとして1つになるための、壁でもあった。
プロたちの中に1人で飛び込み、アドバイスを求めた勇気ある彼の行動。
その背景にあるのは比較的順調だった大阪チームでさえ、実はまだまだ一枚岩になれずにいた現実だった。

「ぶつかることを怖がらずに、とにかく話し合うこと。
プロの現場でも同じ。
キミたちは同じ目的を持ったチームだ、いいものをつくりたいという気持ちは同じはずだよ。」

優しく諭す岩本監督の言葉は、葛藤する若きクリエイターの心に届いたのだろうか。

Pro's Voice
岩本 晶 プロの現場は「共同制作」の現場。 何かトラブルが起きたら、 力を合せて取り返せばいい。 1人ではできないことをするために、 プロはチームを組むのです。

トップページに戻る